※使用しているタロットカードは「マルセイユタロット」です。
タロットカード「隠者」の意味を数字から解釈してみる
「隠者」のカードは「9」という数字があてはめられます。
ここでは、まずこの「9」という数字についてみていきたいと思います。
「隠者」という言葉から内向きな印象がありますが、「9」は奇数のため、どちらかといえば能動的です。行動的な性質を持ちます。
では、どんなふうに能動なの? となると……こんなイメージでしょうか。
旅をする。
前の数字である「8」が、その説得力を使って得た力や権力に対して、「このままでええのやろか……」と、いったん得た力や権力から離れる。そして、自己を見つめなおす旅をする。
そんなイメージです。
「9」という数字は、「3」が3つで成り立ちます。
もともと「3」は、生産性を示す数字です。
そこには「新たなものを生み出す」という意味が込められていたわけです。
けれども
これまで創りあげてきた数々のものに、いつしか囚われるようになり窮屈になってくる。
そんな窮屈さから抜け出そうとしがらみを取っ払い自由になり、生きることや人生に対する意味を考え直す。そして新たな道を模索する。
「3」が固まった数字の「9」には、このようなストーリーをみることができます。
また「9」は総合性がある数字です。
全体的なことを理解したうえで、物事の本質を掴んでいる数字。
バラバラになっているものがあるとすれば、それらを共通する根本の部分で統合する数字。
「9」は一桁の最後の数字であるから、つまることろ、「1」で始まった物事が「9」においていったん完了する、という数字として扱うこともできます。
実は正直いうと、「9」にどこか世離れしていて暗いイメージを持っていました。またその本質が能動的であることを知って、初めは少し戸惑ってしまったことがあります。
けれども、「1」の完了として「9」をみたとき、いろいろなことを知っているからこそみんなを見守ることができるし待てる余裕がある、側面を垣間見ることができました。
行動的には「ストップ」なことが多く表面上は賑やかではありませんし、むしろ、じっとしている印象なのでアクティブさが感じられない分、「暗さ」を伴うかもしれません。
けれどもそれは、これまで培ったものを自覚することで新たな転機に活かすために内省する「ストップ」であり、未来へ目を向けるための「ストップ」なのだとすれば、「9」が表す「能動的なストップ」は、運命の輪を回すにも欠かせない大事なことかもしれません。
タロットカード「隠者」の意味を絵柄から解釈してみる
杖
処女性の男根
杖は、「地上と接点を持つ時の意志のあらわれ」だといわれています。
隠者は「腰から下」に杖を持っています。
しかし、地上との接点であるはずの「杖」は、地についていません。ここから「男根」という象徴がでてくるのですが……
つまり、物質的肉体的世界である地上において、その機能をはたしていない、ともいえます。
だから、「処女性の男根」なのです。
「処女性の男根」についていえば……
肉体的な生殖機能はないが、精神的な生殖機能を持つ
といってもいいのかもしれません。
人間以外の「なにか」と交わろうという試みが描かれている、と捉えることもできましょう。
「処女性の男根」は、人間存在の根源の土台であり、その人の個性の核となるもの、といわれます。
物質的肉体的な繋がりがなくとも、これを持っていれば、「存在している」というそのことだけで喜びを味わえるのだと思います。
ランプ
独立的意志を表すランプ
真っ暗闇の中にランプの灯りを照らすと、そこに「何があるのか」がわかるようになります。
ただし、ランプの灯りはぼんやりしています。
図像では、ランプはカードの左側にあります。
ここは個人の内面を表す場所でした。
そして、左上部は特に、「独立」や「形にする力」を表します。
つまり、ランプに照らされる抽象的な個人の意志は、自分のなかでは固まり形になっていますが、他から独立しており属性がありません。
哲学的な信念を持っていることが、この図からみてとれます。
人物
カードの左側(自分の右側)を向いている人物
意識は内に向かっています。
また、外に開かれていることを示すカードの右側は空白でなにもなく、人物は背を向けています。
つまり、社会や環境、他には全く関心がなく、個人の内面だけに意識が向いている状態です。
隠者が羽織っている衣は、布の範囲が広く、なにかを隠している、と捉えることができます
本心を隠している、とみることもできます
カードの展開によって「隠者」の左側に別のカードがあるならば、そのカードに「隠者」は関心を寄せているか、あるいは、それを隠そうとしているか、と読むことができます
さて。
松村潔先生の著書に、隠者の持っている杖が「処女性の男根」と表現されていて、ここでの解釈も、それをもとにしています。
あるとき、友人に「マルセイユタロットって『性の秘儀』が描かれているんだよね?!」と聞かれたことがあります。
たしかに、隠者の杖に「処女性の男根」が表現されていることをみれば、そうなのだと思いますし、それ以外のカードをみても、いたるところに「性」との結びつきを発見することができるでしょう。
とはいえ、そもそも「性」という言葉をどうとらえるか、によって、捉えることが変わってきます。
少なくとも「陰」と「陽」の関りを解くことは欠かせないわけですが、友人の質問に対する私なりの「解」を出すには、まだまだタロットとの親しみが必要でしょうし、今なお模索中、といえるでしょうか。
タロットカード「隠者」の意味をフランス語から解釈してみる
大アルカナの「隠者」
このサイトでご紹介しているタロットはGrimaud社のマルセイユタロットであるため、フランス語名についても少し触れておきたいと思います。
フランス語(マルセイユタロットのグリモー版)では「L’HERMITE」
実は、手持ちの辞書に掲載されておらず、インターネットの力をお借りました。
「Glosbe – 多言語オンライン辞書」から「隠者」という訳が見つかりました。
けれども、いろいろと調べていたときに出てきたもので興味深かったのがこの訳です。
「homme des caverners」
たまたま「英語→フランス語」という変換がなされていたときに目についたフランス語表記です。
「homme des caverners」を直訳すると「洞穴人」「穴居人」
つまり「洞窟で暮らす人」という意味になります。
これを知ったとき、宮本武蔵、が頭の中に浮かんできたのですが……
実は、バーバラ・G・ウォーカーの「The Secrets of the TAROT(タロットの秘密)」の「9.隠者」の項目にこのような表現があるのです。
ある時期をひとりで荒野で、あるいはまた精霊の再生の子宮を表わす洞穴で過ごすということは、幻想者、賢人、魔法使い、預言者、救世主など、その他の神聖な男性の習慣とされた。
たしかにヨーロッパでも日本でも、「賢人」「予言者」などといわれる人のなかには、「世間で大きな力を持ったあと世間から離れる姿」が伝承されています。
映画でも、このような描写は多々見られます。たとえば……スターウォーズのヨーダとか。
もし「隠者」という言葉にピンとこない場合は、宮本武蔵やヨーダのイメージを掴んでいると、リーディングの際にも読みやすいかもしれません。
ちなみに。
そんな隠者の若い頃って、やっぱり、やんちゃしていることが多かったりするんでしょうか?!
少なくとも、「隠者」の若い頃は「魔術師」であったことだけは分かっていますが……
タロットカード「隠者」から恋愛を読む
まだ相手がいない場合の「隠者」からのアドバイス
「隠者」は、陰気で何を考えているのかわからない、という印象を持ってしまうかもしれません。社会に背を向ける絵柄から孤独を表すことはあります。
ですが、「隠者」が持つ数字は生産性が3倍の「9」という数字です。
「隠者」という言葉が与えるイメージよりも、好奇心は強いです。
また「隠者」は、本質を見つめ直すカード。
そして、ここでの「本質」という言葉は、「わたし」に置き換えてみたいと思います。
では、「わたし」ってどんな人?
「わたし」と思っているものは、いつもと同じ毎日では気づきにくいものです。けれど、いつもと違うことをしたり、いつもはしないことをやってみたりすると、「わたし」を確認しやすくなります。
いつもと違うことをして「え?! これって意外と楽しいんだ!」「こういう服も似合うんだ!!」といった、新しい発見を楽しんでみてほしいのです。
隠者はいいます。
「いつもと違うことをしても、わたしはわたし。『わたし』という本質は変わらないよ」と。
だからこそ、「わたし」の再確認をしてみることで、「わたし」にふさわしい相手を見つけてほしいと思います。
恋人とギクシャクしてきたときの「隠者」からのアドバイス
パートナーとギクシャクしてきたときに「隠者」がでてきたら……彼を放っておいて旅にでるといいかもしれません。
パートナーとギクシャクしているときは、いったん、相手と距離をとってほしいのです。
距離をとって「わたし」を再確認してみて、というわけです。
もちろん、別れたらいい、というわけではありません。ここは、ひとりになるためのまとまった時間を取ってみて、という提案です。
そのための「隠者」がおすすめする方法が……旅にでる。
できれば、携帯電話などの通信機器は持たず、アナログなひとり旅がいいです。
ただ……「旅」というと、現実的に難しい場合もあると思います。
そんなときは、図書館へGO!
本は、自分以外の脳みそを間借りができる便利なアイテムです。
自分以外の脳みその中身を体験することで、これまでに自分が知らなかった世界を体験するのが、本なのです。
旅から知らない街で体験を得るかわりに、本から知らない世界を体験する、というわけです。
本からでも、これまでと違う「わたし」に出会うことがあるでしょう。
もしかすると、彼(彼女)と仲直りするコツを見つけられるかもしれません。
タロットカード「隠者」から仕事を読む
仕事のキーカードで「隠者」が出てきたなら、なぜその仕事(作業、営業など)をするのか? という意味を段階を追って考えてみてほしいのです。
この段階を追って意味を見出すポイントは、「なんのために?」という質問を繰り返すことです。
「なんのために」を繰り返すと、徐々に抽象度があがっていき、物事の本質に迫ることができます。
思うように仕事が進まなかったり、仕事に行き詰っていたり、仕事にやる気がでないときは、ぜひ、試してみてください。
どんなに単純な作業でも、誰かの何かの役にたっているとなると……そんなところで立ち止まっている場合ではありません!! ヨネ。
隠者のアドバイスである「なんのために」
これは、本質を見極めるための魔法のことば、です。
それともうひとつ。
仕事がうまく進められないときに「隠者」のカードが出てきたら、新しいやり方ではなく、これまでの自分の経験にヒントがあるという暗示を表すことがあります。
「なんのために?」と同時に、「どんなことをしてきただろう?」「壁にぶつかったときはどうしていただろう?」と、過去を振り返ってみるのもおすすめです。
タロットカード「隠者」の意味つれづれ
思慮深く哲学的で、どこか現実味がない解釈をされがちな「隠者」なのですが、もう少し頭を柔らかくしてリーディングしてもいいんじゃないかなぁ、と思うことがあります。
たしかに、タロットの「隠者」のカード自体は、占星術的には「乙女座」に相当して、「きっちり、完璧」といったニュアンスはあります。
けれども、隠者の「9」という数字だけをみると、占星術でいう射手座にも相当するわけです。そして、射手座には「フェアな精神」や「高みを目指す」という意味もあります。
なによりいつも思うのですが……
そもそも「占い」とは、人を不安にさせたり、都合のいいことばかりをいって人を依存させたりするものではなく、誰かを応援することができるスゴイ技術だと思っている私です。
そして、この占いをする占い師って、私にとっては「明るい隠者で在れ!」と思うことがあります。
これまでにいろいろな経験や学びを得てきた思慮深い隠者、やから?やけど? 明るくてオモシロイ……ってやつデス。
私は、そういう占い師でありたいと、思います。
ここまで「隠者」についてみてきました。
少しでも「隠者」に親しんでいただけましたなら、嬉しい限りです。
※参考図書
- 数の原理で読むタロットカード 松村潔(星和書店)
- 魂をもっと自由にするタロットリーディング 松村潔(説話社)
- 大アルカナで展開するタロットリーディング 実践編 松村潔(説話社)
- 数は何を語るのか F.C.エントレス、A.シンメル(翔泳社)
- タロットの秘密 バーバラ・G・ウォーカー(魔女の家Books)
- タロット象徴事典 井上教子(図書刊行会)
- ロワイヤル仏和中辞典 (旺文社)
- Le Robert Micro Dictionaire De LA Langue Franaise (DICTIONNAIRES LE ROBERT)
コメント