※使用しているタロットカードは「マルセイユタロット」です。
タロットカード「塔」の意味を数字から解釈してみる
「塔」のカードは「16」という数字があてはめられます。
ここでは、まずこの「16」という数字についてみていきたいと思います。
「16」を一桁に還元すると、「7」となります。つまり「16」は、数字の「7」の「運動力」という本来の性質を持ったまま、捉え方が逆相します。
この場合、もともと外側に向けて突破力を発揮していたところ、逆に、外から中に向けて衝撃を与えられてしまう、ことが発生します。
「7」の戦車の馬が、馬車に乗っていた自分に向かって逆走してくる、と思えばわかりやすいかもしれません。
精神性や物質性を象徴していた馬が自分に逆走してくるとどうなるか……好むと好まざるとにかかわらず、自分の殻が破られる……ということです。
ところで「16」という数字は、4×4です。
安定を表す4が4倍になるために、「16」という数字は安定も行き過ぎて動けないほど固くなってしまったイメージを持ってしまうかもしれません。
一般的に、硬質のものが衝撃を与えられて壊されるとき、少しずつ壊れていく、というよりも、一気にヒビが入り粉々になってしまうものです。
つまりこの「16」の塔のカードで示される崩壊は、一瞬にして簡単に崩れていくことを暗示しているとも読めます。
さて「崩壊」というと激しいイメージをまとってしまい、どこか嫌悪されるかもしれませんが、たとえば「脱皮」や「新陳代謝」と思ってみてはどうでしょう。
昆虫や爬虫類は、外皮が剥がれることで成長します。また人間の皮膚にもターンオーバーがあり、これがうまく作用しないと、お肌が荒れる原因となります。
脱皮や新陳代謝が起こらないと成長が止まってしまったり、古いものがくすぶり続けることでトラブルの原因を作ってしまいます。
塔の崩壊が人生サイクルに必要なものだとするならば、壊れる時期を故意に遅らすことは賢明ではないのかもしれません。
確かに、これまで積み上げてきた人生経験や価値観は、たやすく手放せるものではないかもしれません。ですが、タロットに描かれた壊れる塔は「ハーフキューブ」
ハーフキューブとは、正方形の半分。正方形は「四つのエレメントで構成された世界」を象徴し、つまり「現実」を表します。
けれどもハーフキューブは、半分、だということ。つまり、それは「現実」ではない世界……「悪魔」のカードでデビルがいうところの「まやかしの世界」です。
でもだからこそ、そのハーフキューブが壊れることで、これまでにない新しい未来が開けることがあります。
それに塔の場合は「雷」によって壊れることから、自ら壊すというよりも、外的影響によって必然的に壊れざるを得ない、と捉えることができます。
「今」の状況としては大変なことはたくさんあるかもしれませんが、この先の未来のことを考えたならば、受け入れることが大切なこともあるのだと思います。
そのため、このカードが出てきても「悪い状況を表しているわけではない」、ということだけは押さえておきたいところです。
外的影響によってでも自分の殻が破れたならどんな世界が待っているのだろうか、と前向きな気持ちが、塔が壊れた後の未来を作るように思うからです。
そうそう「ターンオーバー」が出てきたついでで恐縮なのですが……
最近つくづく思うのは、お肌のケアは若い頃からしておいた方がいい!! ということ。この頃、特に、身につまされることが多くて大変です!
中高生時代、毎日部活動にはげんで真っ黒に日焼けをしていたもので、それが勲章?! であるかのように思考がパターン化されてしまっていて、日焼け止めクリームなんて塗ることもなくおりました。
するとどうでしょう!! 30近くなった頃からさぁ大変!!
年齢とともに時間がかかるターンオーバーが、若い頃の負担が原因でより遅くなっていることなんてあるのかも?! などと考えると、10代からのお肌ケアはホンマに大切やと思い、娘には口酸っぱく話すのですが、あきませんね。
とはいえ最近は、その状況その時に最善であったなら「まぁいいよ!」と思えるようになり、これも、生きることを楽しむために長年培った価値観という「塔」の崩壊があってこそ。
「塔」の新陳代謝とは、心と体の限界突破、なのかもしれません。
タロットカード「塔」の意味を絵柄から解釈してみる
雷
自由への解放を啓示する雷
雷はカードの右上から中央に向かって描かれています。また上部中央の「権威」や「社会的地位」を示す場所で、雷によって塔が壊れています。
雷の影響は社会的な部分、仕事上の立場と捉えるといいのですが、雷による崩壊はそこに影響してくると読むことができます。
ただし、雷は右上の「天啓」を示す位置から降り注いでいますから、その崩壊は必ずしも「悪い」ものとは限りません。
起こるべくして起こる、と捉えることができるからです。
落ちていく人物
崩壊の影響を受ける人物
カードに描かれている人物は二人います。
ひとりはカードの左側へ、ひとりはカードの右側に落ちています。
カードの左側は自己の内部を表す部分で、カードの右側は自分より外の世界を表します。
つまり、カードの左側に落ちた人物は、より自分の内面に集中することになります。
一方、右側に落ちた人は、外の環境へ自分を解き放ちます。
あるいは、外面が崩れたことで落ちるもの(外面的な崩壊)、内面が崩れるたことで落ちるもの(内面的な崩壊)、とみてもいいかもしれません。
積み上げてきたもの、「塔」は、必ずしも生活や仕事などの実際的なことばかりでありません。これまでに繰り返してきた思考や行動のパターン、価値観なども含まるからです。
そのため、どちらの人物の立場に自分を見立てるか、を考えてリーディングをしてみるのもいいと思います。
色とりどりの〇
ばらばらになった状況を示唆する〇
塔の周りに、色とりどりの〇が描かれています。
雷の火の子、塔の残骸、などともいわれるこの〇は、左右上下に散りばめられていてます。
塔が壊れた状況において、いろいろなものがバラバラになっている、と読むことができます。
すくなからず、混乱した状況が起こることが示唆されている図像となっています。
「目から鱗が落ちる」という表現がありますが、この表現は、塔のカードが意味するところでもあります。
塔の残骸のような火の子のような「〇」の様子に、目から鱗を落としている様子をイメージしてみるとイメージが重なるかもしれません。
ちなみに、ここでいう「目から鱗が落ちる」といえば、(なんども宮崎駿作品を出して恐縮ですが)「千と千尋の神隠し」のエンディングあたりで、龍が少年に戻る時の描写! あの感じ。
ざざざざぁ~、っと一瞬なにかの衝撃が走ったかと思えば、龍のうろこが逆立ち始め、鱗がはがれていく様子。
私には、あれが「塔」のカードが表現する「崩れる」のイメージにピッタリです。
タロットカード「塔」の意味をフランス語から解釈してみる
大アルカナの「塔」
このサイトでご紹介しているタロットはGrimaud社のマルセイユタロットであるため、フランス語名についても少し触れておきたいと思います。
フランス語(マルセイユタロットのグリモー版)では「LA MAISON DE DIEV」(DIEVはDIEUの古典表記)、直訳すると「神の家」です。
一般的に「神の家」は、神殿や教会を指すようです。
ちなみに「塔」は、「LA TOUR」という単語が使われます。ロスカラベオ社のマルセイユタロットでは、「LA TOUR」となっています。
さて「塔」や「家」などの建物というのは、意識の構造を象徴する、ともいわれているそうです。
学んだ知識や経験したことが記憶として意識に取り込まれると、それを参照媒体として私たちは、目の間にある「それ」を、「コップ」であったり「机」であったり、あるいは「苦手なこと」と認識するともいわれています。
そういうものを「意識の構造」だとするならば、塔はまさしく、私たちの経験や知識の集大成ともいえるでしょう。
しかしここは「神の家」。
神の家とて壊されることもある、ということならば、雷である天啓は「神の家」よりも大きな存在、ともとれます。
もし「私は十分に知識も経験もある」「私は完璧である」と思っているならば、それは天啓によって壊される、ということかもしれません。
バベルの塔を完成させるにはまだ早い、とでもいわれているかのようですね。
「神」というと仰々しくもありますが、私には、一神教が広まっている西洋的な「神」、という印象を持つことがあまりなく、どちらかというと、もっと親しんだ印象があります。
それはきっと、じーちゃんとばーちゃんの影響かもしれません。
「食べものにも物にも神さんがいるんやで。だから大切にせなあかんのや」と、祖父母たちに教えられてきたものです。
敬称も、「神様」ではなく「神さん」というほうでしたから。
あ、決して軽んじているわけではないのです。
ただ、誰かがいつもそばで見守ってくれている、という安心感と、あらゆるものには「命がある」と、教えてくれるために、子どもにも親しみやすくしてくれただけやと思います。
しかし子どもの頃の影響って、大人になった今でも大きく関わってくるものデスネ。
タロットカード「塔」から恋愛を読む
まだ相手がいない場合の「塔」からのアドバイス
「塔」が出てきたときは、ショックなことが起きるは免れないかもしれません。
恋人がほしい、とアタックしてみても思うようにならないどころか、相手の方から振ってきたり、同性から妨害を受けたり、片思いの彼が急にいなくなってしまったり、連絡が取れなくなってしまったり……
けれども、ここは「まぁ、そういうこともあるわな……」と、どれだけ冷静に状況をみられるかが勝負どころ。
なぜなら、「塔」のあとには「星」のカードが続きます。
「星」は次回のテーマのためここでは詳しく触れませんが、「星」は「希望」と象徴されることがあるくらいです。
つまり、ショッキングな出来事が起こった後には希望の星が輝くというわけです。
けれども、ショッキングなことに振り回されている間は希望の星を見ることができません。
そして希望の星をみるためには、ショックの悲しみを「ないことにしない」ことが大切で、そのままを受け止めること。
「腹立つ! むかつく! バカヤロー!! なんでやねん!! どんな言葉でも、湧いてきたものを口に出してみる。泣いたらあかん、なんて思わずに、泣きじゃくったらえええんです」と、塔のカードはアドバイスします。
塔の破壊を、ないことにしないことが、なにより大切です。
恋人とギクシャクしてきたときの「塔」からのアドバイス
「塔」には「新陳代謝」という意味があり、パートナーとギクシャクしてきたときに「塔」がでてきたら、「別れ」の予感が付きまとうことも多いのですが……ここには二つの可能性があります。
ひとつは、「関係を作り直すための新陳代謝」だという可能性
もうひとは、「関係を一新して新しい希望に出会うための新陳代謝」だという可能性。
簡単にいえば……別れずに縁を深めるか、別れて新しい人生を歩むか、です。
「塔」はいいます。
「ここは焦らず、ひとつずつ丁寧に、自分と向き合うことを大切にしてほしい」と。
その先には、希望の星が待っています。
タロットカード「塔」から仕事を読む
仕事のキーカードで「塔」が出てきたなら、思わぬアクシデントが予想されます。
ただ、冷静を装おうとすればするほど不安が襲ってくるので、信頼できる誰かに話しを聞いてもらうことを考えてみてください。
大事なことはなんでもかんでも自分ひとりでやろうとしないこと。
これを、頭の片隅に置いてほしいと思います。
それともうひとつ。
状況が順調なときの「塔」は驕りの警告となることも多いです。
そのため、順調なときほど事業チェックをしてみるといいです。「最悪シミュレーション」はそのひとつ
調子がいいときほど暴走もしやすくなりますから、謙虚な心を、ここで振り返っておきたいものです。
「塔」はいいます。
「新陳代謝のあとは、ほんもの、しか残らない」と。
ここは、踏ん張りどころです。
タロットカード「塔」の意味つれづれ
辛いことやしんどいことがあり、その状況から抜け出そうとも、自分からは、なかなか一歩前に進もうとする気力さえわかないことがあります。
そんなとき、塔のカードのように、自分はなにもしていなくとも外からの影響で状況が倒壊し強制終了がかかってしまう、という不思議なことはよくあるものです。
そしてあとから考えると、「あのときあんなことがあってよかったよ」という場合も多く、決して「壊れる状況」が悪いわけではないと、塔のカードはいってくれます。
一方で、小さなひずみが起きていることはなんとなく分かっていながらも、応急処置的にひずみを繕うことはあまり得策ではない、とも示唆してくれるのですが……
占う、というよりも、状況を客観する手段としてタロットをひいてみると、モヤモヤやごちゃごちゃした思考が整理されることがあります。
まさに、目から鱗が落ちる!! わけですが……
目から鱗が落ちる思考ツールとしてのタロット、カバンにひとつ常備?! なんていかがでしょう!
ここまで「塔」についてみてきました。
少しでも「塔」に親しんでいただけましたなら、嬉しい限りです。
※参考図書
- 数の原理で読むタロットカード 松村潔(星和書店)
- 魂をもっと自由にするタロットリーディング 松村潔(説話社)
- 大アルカナで展開するタロットリーディング 実践編 松村潔(説話社)
- 数は何を語るのか F.C.エントレス、A.シンメル(翔泳社)
- タロットの秘密 バーバラ・G・ウォーカー(魔女の家Books)
- タロット象徴事典 井上教子(図書刊行会)
- ロワイヤル仏和中辞典 (旺文社)
- Le Robert Micro Dictionaire De LA Langue Franaise (DICTIONNAIRES LE ROBERT)
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