タロットを深く学びたいと尋ね来てくださる方々や、講座や勉強会などでご一緒する方々には、タロットのリーディング技術の前に、心の準備についてお話していることがあります。
それは、自分らしい「占うスタンス」を持つことの大切さです。
実は、大阪で占いをしていたときに、鼓動が激しく胸打ち心が乱れてしまう経験をしたことがあります。
それは
『鑑定のせいで命を絶つことにした』という家族の遺書が残っていたので連絡をした
というメッセージを受け取ったことです。
この話を聞いたとき、私は大きなショックを受け、深く動揺したのを今でも鮮明に覚えています。
ただ、自分にやましいことは一切なかったため、落ち着きを取り戻したあとは毅然として、然るべきところに然るべき対応を委ねました。
そしてあらゆる履歴とともに調べたところ、遺書を残したとされる「家族」は存命で、しかも連絡をしてきた本人の自作自演だったことが分かりました。
それ以降はその人物からの連絡は途絶え、幸いにも、私自身に実害はなく、穏やかな結末を迎えることができました。
「占い」を仕事にするなら持っておきたい「スタンス」
さて、この業界
ほんとうに様々な価値観が息づいていて、その中で私たちは日々、多くの方々と出会います。
特に街中の占いハウスなどでは、療養中や服薬中の方でも、お店としてはどんなお客様もお迎えしていることがほとんどだと思います。
なぜなら、人の精神状態は一見して分かるものではありませんし、訪ねてこられる方に寄り添うことを旨としていて
たとえば、占いハウスとして≪訪ねてくださったお客様を断らない≫というルールがあったり、
なかには、面接のときに「周りが全て敵でも自分だけはお客様の味方だ、という姿勢で鑑定に臨むことはできますか?」と聞かれることもあるようです。
またお客様の中には、席についてから精神的な疾患を抱えていることを打ち明けてくださる方もいらっしゃいますが、だからといって、占いハウスのほとんどでは医療的なサポートが必要な方への配慮はなされていないのが実情だと思います。
ちなみに、個人で活動している占い師さんの中には、鑑定ができないケースを柔軟に明記している方もいます。
これは、占いがもたらす精神的な刺激が、特に躁鬱症状などに影響を及ぼすリスクを知っていて、また組織ではなく個人として全責任を背負うからこそ
万が一の時にも、お客様が安心して鑑定を受けられるよう、誠実なサポートができるよう、事前に制限を設けているのです。
コミュニケーションは言葉を受け取る人の「感じ方」が全て
そしてなにより……占い師がどのような想いで、どのような言葉を選び伝えようとも
受け取る側の感じ方が100%、その人の真実であり
相手の心に響いたことが、その人にとっての事実となり
そこに他人が介入することはできません。
もちろん、たとえ占い師が「そんなつもりで言ったんじゃないのに……」と思っても、それは通用しないものです。
相手が受け取ったものが、その人にとっての「感じ方」であり「受け取り方」、それが全てだからです。
どれだけ言葉を尽くしても、心に届かないことはあるし、たったの一言でも、深く伝わることもあります。
それが「コミュニケーション」です。
でもだからこそ、私たち占う側は、言葉の選び方や表現の仕方に、もっと真摯に向き合う必要があると感じています。
もちろん、それは耳障りの良い言葉を選ぶという意味ではありません。
それは「自分自身に誠実であること」を大切にする、という意味です。
そしてこの「自分に誠実である」という姿勢のことを、私は「スタンス」と読んでいます。
ここには、占いに対する自分の信念や、タロットをリーディングするときの在り方、占いに向き合う姿勢などが詰まっています。
そのため、節目節目で「自分のスタンスを大切にしてくださいね」とお伝えしているのです。
「スタンス」を強調する理由
でも、なぜそこまで「スタンス」を強調するのかといえば……
それは、自分なりの「スタンス」がハッキリしていると、冒頭のような経験や心無い言葉を浴びせられたり、あるいは「当たる/当たらない」といった雑音や「あの先生はいいよ」などの評判などに一喜一憂せず、穏やかな気持ちで自信を持って自分のリーディングをしていけるからです。
ちなみに、「占い師になりたい!」という方は多いのですが、残念ながら、途中でやめてしまう方も少なくありません。
そしてその大きな理由のひとつに「心が疲れてしまう」ことがあるように感じています。
たとえリーディングはできても、自分の芯がしっかりしていないと、お客様の言葉に感情が揺さぶられたり、不安になって動揺してしまうこともあるでしょう。
ときには、カードが示してくれることを無視してしまったり、お客様との関係を大切にしようとするあまり、つい本心ではない「忖度」をしてしまうこともあるかもしれません。
忖度によって一時的に喜んでくださるお客様は、また来てくださるかもしれません。
けれども、そのお客様が来るたびに忖度をし続けなければならないとしたら……占い師の心に大きな負担をかけてしまうことにもなりかねません。
もちろん、タロットを読むことよりも忖度することが、その占い師の「スタンス」としての最適解ならば毅然としていられるはずです。それが、その人の揺るぎない信念だから。
一方で、もしそれが自分にとって居心地の悪いことならば、お客様が離れるのが怖くてご機嫌伺いはやめられず、怖れと不安ばかりが募り、いつしか自分の心を壊してしまうことにもなりかねません。
お客様との信頼を築くならば、まず自分自身の心を護ることは何より大切で、お客様とお互いに信頼しあえる関係性を長く築くためには、占う側も自分を大切にすることが不可欠です。
スタンスとする「最適解」をみつけよう
ここで誤解を招きたくはないのですが……忖度するのがいいとか悪いとか、そんな話がしたいわけではありません。
自分にとってそれが「最適解」ならば、誰に遠慮することもなく、堂々とその道を進めばいいのです。
自分が納得できる道が、最善だと思うから。
ただ、自分にとっての「最適解」が違うと感じるならば、無理な忖度はやめた方がいいだろうし
もし「最適解」がまだ見つけられないのなら、自分なりの「最適解」を育むつもりで占いと関わることが、自分の心を護ることにもなります。
なぜなら、その過程で仕事への誇り、揺るぎない自信も育まれるからです。
どんな理不尽な出来事が起きても、自分の仕事に胸を張って「YES!」といい、お客様に寄り添いながら、相応しい言葉や態度を返すことができる
お客様との信頼関係の中で開かれる、納得の未来が待っています。
占いに対する私の「スタンス」
私自身、あの経験があったからこそ、占いに対するスタンスがどれだけ大切かを身に沁みて感じました。
そして、お客様とお互いのリスペクトを基にした繋がり作るためにも、ほんとうに大切なことだと実感しています。
ちなみに、私のタロットに対する「スタンス」は「タロットが見せてくれたそのままのことをお伝えする」こと。
だからセッションでは、物語を編むようにタロットカードの説明をしながら、お客様とカードとともに進めています。
「このカードにはこんな絵が描かれていて、一般的にはこんな意味があり、こんなことを教えてくれます」などと説明した後に、「そこから、ここにはこんなメッセージがあるんです」とか「こんなことが見えてくるんです」と、読み解いたことをお伝えしたり
あるいは、カードの説明の後に「何かピントとくることはありますか?」「思い浮かぶことはありますか?」などの問いかけをすることもあります。
なぜなら、カードの説明から問いかけをすると、それに沿ってご相談者さん自身が、ご自身の状況や心の状態を自然と連想し、そこから具体的なお話をしてくださるようになるからです。
これは、ご相談者さんがご自身の内側に気づきを得るお手伝いともいえますし、安心して心を開き、自分自身を語れるサポートにもなります。
またカードを通して、ご相談者さん自身がハッと気づきを得られるようになるので、こちらがあれこれ言わずとも「薄々わかっていたことなんですけどね」と、ご自身の状況に納得される場面も多くあります。
まるで、自分の中に眠っていた答えが、カードにそっと引き出されるようなものです。
私は、このようなご相談者さんがご自身の内に秘めた「こたえ」をみつけるプロセスを大切にしています。
占い師の大切な役割
「受け取り方は相手の自由」というのであれば、カードから相手が感じるままに受け取ってもらえばいい。
だからそのためのきっかけとして、カードの読み手が「カードを説明する」役割を担うわけです。
カードの説明はあくまで「知識」というニュートラルな情報だから、そこに占い師の感情的なものが含まれることは少ないし
その説明を聞いたご相談者さんが、ご自身で具体的な様子や状況を連想してくれるので、占い師の主観が介入する余地もありません。
そのため、お互いに穏やかなコミュニケーションが生まれます。
そしてあとは、ご相談者さんが話してくれることに「そうだね、そうなんですね」と柔らかく相槌を打つだけ。
ご相談者さんの言葉に耳を傾けることも、占い師の大切な役割です。
また説明からカードの知識をシェアするわけですから、どんなご相談にも柔軟に対応できて、ブレない一貫した姿勢で臨むことができます。
「スタンス」とは、自分の心を護るための軸であり、セッションを進める羅針盤
そのブレない軸が自分の誇りとなり、お客様の言葉や他人の評価に対して動揺することなく、いつも真摯で穏やかな反応を返せるようになります。
なにより、さまざまな価値観が渦巻くこの業界だからこそ、自分らしい軸を以て進むことは占い師自身にとって大きな力となり、お客様との信頼関係を築きながら自分らしくいられる芯、となるはずです。
どうぞ、皆様なりの「スタンス」を、ご自身の心を、大切に護ってしてほしいと思います。


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