マルセイユタロットの特徴を知って頂くために、ウエイトライダー版のタロットと比較をしてみました。
日本ではポピュラーで、使われている人も多いウエイトライダー版。
占い方は同じです。シャッフルをしてスプレッドに並べて読み解いきます。
▶参考記事:タロットを独学している人におすすめのタロットの練習方法
ただ、タロットカードを選ぶときに「ライダー版とマルセイユタロットとどっちがいいですか?」と聞かれることがよくあります。
そこで、この二つの違いをみていきたいと思います。
マルセイユタロットとウエイトライダー版タロットの大きな違い
タロットカードの数字と絵柄が入れ替わっているものがある
マルセイユタロットとウエイトライダー版タロットの大きな違いともいえるのが、こちら。
8番目と11番目のカードの入れ替わっていること
「正義」のカードが
マルセイユタロットでは数字の8
ウエイトライダー版では数字の11
となっている
「力」のカードが
マルセイユタロットでは数字の11
ウエイトライダー版では数字の8
となっている
タロットカードの絵柄が大きく違う
たとえば、描かれている人物の人数が違う、ということもあります。
「恋人」のカード
マルセイユタロットでは
男性一人と二人の女性。
ウエイトライダー版では
男性と女性が一人づつでカップル成立
「太陽」のカード
マルセイユタロットでは
子どもが二人描かれている
ウエイトライダー版では
子どもが一人しか描かれていない
タロットカードの絵柄にある人物の向きが違う
自分物の視線や顔の向きは、特にマルセイユタロットの意味を汲むうえでは大切な要素のひとつです。
「愚者」のカード
マルセイユタロットでは
カードの右側を向いています。
ウエイトライダー版では
カードの左側を向いています。
「皇帝」のカード
マルセイユタロットでは
カードの左側を向いています。
ウエイトライダー版では
カードの正面を向いています。
タロットカードのマルセイユ版とウエイトライダー版のカードに、なぜこのような違いがあるのか?
ひとつの特徴として、ウエイトライダー版のタロットが特に「カバラ」の在り方を反映させて作られたカードだから、といえるように思います。
もともと15世紀のイタリアがタロットカードの発祥だといわれています。
しかも当時は、カードゲームとして使われていたとされるタロットです。
けれどもフランス革命前の18世紀後半の占いの文献には「タロット」と表記されたものがあり、そのときにはすでに「タロット占い」が市民権を得ていたことがわかります。
そして19世紀後半から20世紀初めに誕生したのがウェイトライダー版のタロットです。
ウェイトライダー版のタロットは、隠秘学、秘教、魔術に関する著書を執筆して文筆家、アーサー・エドワード・ウェイトが作ったとされているものです。
ですから、ここに、彼が研究していた思想である「カバラ」が色濃く反映されいる、というわけです。
一方、マルセイユタロットの作者は不明で、15世紀最古のタロットの図案に近いともいわれます。((注)研究がされているところですが諸説あります)
そのためマルセイユタロットは特定の思想をみることなく、陰陽や四代元素、数秘学や象徴学、占星学などの古典的な学問から本質を理解することでカードを解釈しリーディングすることになります。
いずれにしてもウエイトライダー版はその作者が分かっているだけに、マルセイユタロットとウエイトライダー版のタロットでは影響している考え方の違いがあるわけです。
特にウエイトライダーのタロットにはその作者の思想が色濃く反映されているでしょうし、それに合わせて図像や色彩が違っても不思議ではありません。
タロットカードの絵柄がタロットのリーディングに影響してくる?!
初心者には人気があるウエイトライダー版のタロット。
「ライダー版の方が使いやすいよ」や「ライダー版の方が初心者向きだよ」といわれることも多いのですが……
ここでは、リーディングに影響する特徴を考えてみたいと思います。
どっちを使おうか迷っている?! なら、ぜひ参考にしてみてください。
マルセイユタロットはシンプル。ウエイトライダー版タロットは色彩豊か
こちらの写真を比べてみてください。
マルセイユタロットの大アルカナ
ウエイトライダー版の大アルカナ
マルセイユタロットは「赤・青・黄・白」の4色が主体です。
一方のウエイトライダー版は「赤・水色・黄・白」の他に、黒や灰色、オレンジや緑など、色とりどりです。
色彩が豊かな分、マルセイユタロットと比べると描写が緻密な印象もあります。
小アルカナでよくわかるマルセイユタロットとウエイトライダー版タロットの絵柄の違い
マルセイユタロットの特徴は、そのシンプルなところにあります。
色彩もそうですが、シンプルさが最もよくわかるのが小アルカナです。
マルセイユタロットの小アルカナ
ウエイトライダー版の小アルカナ
マルセイユタロットの小アルカナは、もはや「絵」というよりも……数をあらわしているにすぎません。
一方、ウエイトライダー版の方は「絵」です。一見するだけで「どんなことがいいたいのか?」を読み取れることがあります。
きっと、この「一見するだけでカードのいいたいことがわかる」というところが、初心者向きだ、といわれる所以なのかもしれません。
ウエイトライダー版タロットは一見するだけでも、なんとなく読める?!
まずは、こちらを見比べてみてください。
左側のカードがウエイトライダー版のタロット。右側のカードがマルセイユタロットです。
どちらも「小アルカナ・剣(ソード)の10」です。
左のウエイトライダー版のカードをみると、「なんかヤバい??」「死にそうなほどつらくなる?!」「相当厳しい状況なの?!」などと、嫌な連想を持ってしまうかも知れません。
一方、右のマルセイユタロットはどうでしょう?
左のカードほど、イメージが湧いてきたり気持ちがワサワサする、ということは少ないと思います。
「イメージ」が、「ヤバい」「つらい」「きびしい」という先行した気持ちを湧き立たせてしまうことは、カードの特徴として知っておきたいものです。
タロットのリーディングで注意をしたいのは、絵柄に囚われると読み方が偏ってしまう場合があること
特にウエイトライダー版タロットの「剣(ソード)10」の絵柄が与えるインパクトは大きいかもしれません。
自分の身に10本の剣が刺さっている状態……どんなことを想像するでしょうか?
あなたの大切な人と「分かれる」ことや、気持ちが「切れる」「離れる」「散る」となったとき……もしかすると、この絵柄のイメージは合っているかもしれません。
仕事が忙しく疲れすぎていて、まるで瀕死を負っているような状況をみるかもしれません。
たしかに、「剣(ソード)」は「分ける、切る」を象徴します。
そのため10本の剣を表すこの絵柄に、剣の「分ける、分割する、切る」、あるいは、剣の「突く」という意味が強調されているように感じることもあるでしょう。
一方で、「剣」の「分ける」「切る」ということが役立つこともあります。
人間関係がテーマになっているならば、いいご縁ではなく、悪縁を切る、ということもあるでしょう。
あるいは仕事ならば、「分ける」「分類」するという力は大いに効果的です。
ところが絵のインパクトが強いと、その絵柄を見て湧いてくる感情的なものや紐づけられるイメージに読み方が偏ってしまうことがあります。
すると、本来持ち合わせている他のこと、たとえば「剣」であれば「精神性」や「知性」「知識」「情報」という側面に意識が及ばない可能性もあります。
もし絵柄のイメージに囚われてしまうと、それがリーディングの偏りとなってしまう可能性があることは考慮しておきたいところです。
たとえば、彼との恋愛で悩んでいる女性がこのカードをみたらどう思ってしまうだろう?
では……もし彼との恋愛で悩んでいる女性が占いに来られ、この「剣(ソード)10」のカードをみたらどう思うでしょう?
偶然、彼と知らない女の人が楽しいそうに一緒に歩いているところを目撃してしまった彼女。
今、彼との仲がうまくいってない、といいます。
話を聞いてみると、彼の仕事が忙しくてデートの約束もできずにいるのに……という。
なのに、偶然、彼が自分の知らない女の人と楽しそうに歩いているのを見た彼女。思わず彼にそのことを聞くと「彼女はただの友達だよ。偶然、駅前で会ったんだ」と。
そう彼から言われても……彼は「忙しくて」というばかりで、ここ1ヶ月、デートの約束もできていない……なんだか悔しいやら淋しいやら……
そんな彼女が、恋愛について占ってほしい、とあなたのもとにやってきて、展開のひとつとして出てきたカードが
「剣(ソード)の10」
このカードが目の前にあります。
さて、このカードを一目みたとき、彼女はいったいどんなことを考えてしまうでしょうか?
カードのことなど全く知らないとしても、恋愛に悩んでいる状況でこの絵柄をみたとき……どんな印象を持つ可能性があるでしょうか?
一方であなたは、引いたカードを総合的に判断することができます。
そして、カードから見えてくること彼女に伝えます。
「今、彼は仕事で大切な転機を迎えているのかもしれません。挑戦したいなにかに打ち込んでいることも考えられます。プライベートに気が回らないのは、あなたが嫌い、他に好きな人ができた、というよりも、今、やり遂げたい集中したい「なにか」があるとみることができます」
ところが彼女の頭の中は……
「ソード10」の絵柄のように剣が自分に突き刺さるイメージに囚われてしまい、「見知らぬ女性→浮気している??→仕事はウソ??」という思考回路から離れることができず、まるで10本の剣が身を刺すような痛々しさを感じながら、不安で今にも泣きだしそうになって、あなたの話は耳に入らないでいるかもしれません。
タロットカードに「いい」も「わるい」もない
ところで、そもそもタロットカードに「いい」も「わるい」もありません。
たとえば、小アルカナに象徴される4つの記号「棒(ワンド)」「貨幣(コイン/ペンタクル)」「剣(ソード)」「杯(カップ)」は、四大元素をあらわします。
四大元素とは、古代ギリシアの哲学で提唱されたもので、この世界の物質は、火・土・風・水の4つの元素から構成されるとする概念です。
この記事で例にあげている「剣(ソード)」は「風」を象徴します。
「分ける、分割する、切る」という意味を持ちます。
「目に見えないもの」ということで、精神性も表します。
また「剣(ソード)」は直線的です。
自然界には、このような完全な直線や正確な幾何学図形は存在しません。
そのため「剣(ソード)」には、「人が作り出した」という意味を込めて「知性」「知識」「情報」という意味を持つことがあります。
このような意味を持っているにすぎません。
ここに「いい」や「わるい」という概念はなく、もし「いい」や「わるい」と思ってしなうなら、それは、その人の気持ちがカードに映ってしまうからです。
どのタロットカードを使おうかなぁ、と考えている初心者の方へ
どのタロットカードを使おうかなぁ、と考えている初心者の方からすると「結局、どっちのカードがいい?」と思ってしまうかもしれません。
これは大切な問いです。
私がマルセイユタロットでリーディングをしているとはいえ、「どっちがいいの?」と聞かれたならば……
好きだと感じる方、読みやすそうだと感じる方、なじめそうだなぁと思う方
といった「感覚で選ぶといいよ」としかいいようがないのです。
たとえば、絵柄に影響されるかどうかも人さまざまです。たまたま私は視覚に影響されやすいのです。
他の占い師さんに聞いてみたところ、「図像が与える印象があった方が読みやすいからウエイトライダー版を使っている」と、コメントをくださった占い師さんもいらっしゃいます。
そのため、どのカードを使おう? と思っている初心者の方なら、むしろあまり考えずにいろいろなカードを手に取ってみて「どのカードといちばん仲良くなれそうか?」と思ったままに、なんとなく「これ」というものを選ぶといいのではないか、ともいます。
そもそも、タロットにリーディングの型はありません。読み手がカードが言わんとすることをどれだけ汲み取ることができるかにかかっています。
スプレッドの並べ方と切り口の「型」はありますが、それさえも、どこから読むのか、どの切り口を開くのかは、タロットを汲み取る読み手の裁量です。
また、カードの大局をみるのか、詳細をみるのか、によっても読み取れることが異なりますが、カードがちゃんと教えてくれます。
そういう意味で、タロットのリーディングはカードを汲み取る力が大事、といってもいいでしょう。
そのためカードを読みたいのであれば、タロットの意味を覚えるよりもむしろ、カードが言わんとすることを受け取る力が大切になります。
だからこそ、自分にとって「しっくり」くるカードがいいですし、仲良くなれるカードの方が断然、云わんとすることが受け取りやすくなります。すると、自然とリーディングもうまくなっていきます。
またタロットカードの本質や占い方などの基礎的なところは学ぶ必要があると思いますが、自分と感覚の合カードを使っていると、その学びの理解も早くなります。
誰かに勧められたことを覚えるよりも、自分で決めたことを自分で学ぼうとする方が、断然学びは進みますから!
そしてタロットカードは、目に見えないものを見せるためのツールです。
だからこそ最も大切なのことは、感覚的に「いい」と思えるものであり、そして、これからも使っていきたいかどうか? ではないかと思います。
人とのご縁と同じです。
一生の付き合いをしていくつもりで、ぜひカードを選んでみてください。
大切なパートナーを選ぶように、道具も選ぶ。カードと、素敵なお付き合いをしてほしいと思います。
私がマルセイユタロットを使う理由
最後に、なぜ私がマルセイユタロットを使っているのかについてお話します。
タロットのリーディングは自由度が高いだけに、本質を押さえつつ状況に応じた臨機応変な読み方が求められます。
また自由度が高いからこそ、どんなカードを使っても、カードを読む側が偏った見方をすることは賢明ではないと思っています。
そのためタロットリーダーは、カードの意味ではなくカードに描かれている本質的なことを理解し、また、ひとつの切り口にこだわることなく様々な視点をもってカードの云わんとすることを理解する努力は大切だと思っています。
それは、読み手側の主観だけでカードを解釈しないためにも、です。
「いい」も「わるい」もないタロットを読むときは「極限まで客観的であれ」というのが私の信条です。
けれども私は、すぐに何かになじもうとする「水」の性質が強く、物事を客観することが苦手なところがあるのを自覚しています。
今でも客観する訓練を続けていますが、パートナーとして使うタロットも、できるだけシンプルに本質だけを汲み取ることができ物事を客観できるカードがいいと思い、今のカードを使っています。
「百聞は一見に如かず」という言葉があるほど視覚が与える印象は強烈です。五感のなかでも、視覚=見える、が最も現実に直結する感覚です。
ならば……視覚を刺激することで気持ちや思考に訴えるカードを敢えて選ぶこともない、と思ったのです。客観することが難しくなるためです。
このような理由から私は、絵柄の中に情報があまりにも多すぎるライダー版より、よりシンプルに本質を表現しているマルセイユタロットを使っている、というわけです。
また、ゲーム用であれ占い用であれ、神秘主義の教えであれ、タロットがどのような目的で作られたか? はいろいろあります。
ありますが、私は、「タロット」というものを≪潜在意識に潜ることができる道具≫であり≪見えないものを可視化してくれるツール≫として扱っています。
そしてタロットの大アルカナは≪世界中を放浪する言語を持たない民族が「人の理(ことわり)」を絵に描いて残したもの≫などといわれることもあります。
子どもが「遊び」を通じて人間関係や社会性を身につけていくのと同じようなもので、ゲームとして作られた意図に「人の在り方を受け継ぐため」ということがあってもいいのだと思います。
このような意図がある「タロット」ならば、なおさら、絵柄に緊張したりついつい深刻な顔で眺めてしまうようなカードよりも、まるでタロットと遊ぶような心持で、リラックスした状態になって無意識に潜ることができるカードを選びました。
タロットカードを選ぶご参考になれば嬉しいです。
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