LGBTQの方から恋愛のご相談を受けることが増えています。
社会の中でもジェンダーについての議論が取りざたされることも多くなっていますが、占い的にはどんな恋愛のご相談とも同じで、人と人との関りの中で発生する感情的な作用、を読んでいくことが基本のスタンスです。
ただ、ジェンダーも含め「性」が関わるテーマのときには、タロットカードを読むための切り口としていくつかのポイントがあります。
そこで今回は、「性」が関わるご相談を受けたときのタロットを読むポイントに加え、タロットにみる「性」のお話をしていきたいと思います。
Xジェンダーで気になる女の子がいます
私はXジェンダーの無性で体は女です。
友達が集まると彼氏との恋愛話になることもよくありますが、セックスの話になっても興味を感じることがありません。
自分の性器に触れても興奮することがないため、性的欲求は周りと比べて薄いのかもしれません。
ただ、今、気になる女性がいます。
彼女といるとすごく楽しくて、その人のことが一日中頭から離れない時もあり、自分でもどうしたらいいのか困っています。
彼女は今どうしているんだろう、とか思うと、ときどき胸が締め付けられるような感覚になることがありますが、彼女に対して性的な興奮を覚えるかどうかといわれると、いまひとつ実感が持てない自分もいます。
それで、彼女に対する感情が、恋愛感情なのか、単なる友達に対する想いなのか……自分でもよくわからずに悩んでいます。
こんなことを占ってもらうのも変だと思うんですが……
彼女に対する自分の感情は何なのか、それと、彼女に対して自分はどう接していけばいいのか、教えてほしいんです。
ずっと自分が周りの友達とは少し違うのだとは思っていました。だからLGBTQのことを知ってから、ちょっと安心したのもあったんです。でも周りにこんな自分のことを話せる人もいなくて……
すごく不安なんです。今はまだ大丈夫でも、もっと社会に出るようになったとき、こんな自分が周りに受け容れられるのだろうかとか、ちゃんとうまくやっていけるのかどうかとか……
気になる子ができてから、自分でも変なプレッシャーを感じているんですよね。
私、これからどうしたらいいんでしょうか……アドバイスがほしいです。
ジェンダーレスな恋愛相談を受けたときのタロットを読むポイント
たとえば女性の方から「付き合っている女の子がいます。彼女とこれからどうなるのか、私は彼女にどうしていくといいのかをみてほしいです」というご相談も「恋愛相談」なので、相談者と気になる方との関係性をみていくことをします。
そして、同時に、ご相談者の悩みの本質を探っていくこともします。
もちろん、相談内容が結婚や不倫、離婚、仕事などがテーマであっても、悩みの本質をタロットから読み解くことは同じです。
なぜなら、占いで相談されることのほとんどに、その根底で「自分の存在価値」がうごめいているからです。
そのためどんなご相談であっても、私が鑑定で読み解いていくのは相談の根底にみる本質的なものがご相談者の何に影響を与えているのか、だったりします。
そしてケースごとに見ていくポイントは異なりますが、特にLGBTQの方からの恋愛相談については、3つの切り口を意識しながらリーディングしていきます。
それが
- 性自認
- 性的指向
- 性表現
の3つ。
性自認について
性自認は、自分が「男性」であるか「女性」であるか、あるいは「どちらも」であるのか、もしくは、「どちらでもない(しっくりとこない)」のか、といった、自身の「性」の自覚のことです。
これは、本人の認識がどうであるか、に関わります。
性的指向について
性的指向とは「他者に対する性的魅力を感じるパターン」のことで、簡単にいえば「性の対象」のことです。
たとえば、異性に性的魅力を感じるのか、男性に性的魅力を感じるのか、あるいは、女性に性的魅力を感じるのか、もしくは、男性にも女性にも性的魅力を感じるのか、また、そういう感覚を持たない場合(無性愛)もあります。
そして、これは自分がどの「性」であるかの認識とは別のものとして切り離して考えます。
性表現について
性表現は、自分の性が何と認識していようと性的指向がどうであろうと、自分を他に向けて表現することであるため、これも、性自認と性的指向とは別物として切り分けます。
たとえば、髪型や服装、メイクなどの外見から「性」を表現することもあるでしょうし、言葉遣いや仕草から表現されることもあるでしょう。あるいは、性的興奮を表現するものとして、サディズム(S)かマゾヒズム(M)、露出、など他にもさまざまな表現があります。
無性愛の場合は性的興奮を覚えることはないとしても、自分を表現することにおいては無関係ではないと思います。ただその表現は、意に反して対外的にカテゴライズされてしまうことはあるかもしれません。
占いのご相談でジェンダーなどの「性」がテーマになる場合は特に、これら3点についてどのような状態にあるのかをカードから読み解くことが、なぜ相談者がこのテーマに引っかかっているのか、を探るきっかけにもなります。
またこの3点について抑えていることは、相談者の戸惑いや迷いを解くうえでも、またセッションをスムーズに進める上でも大切だと考えています。
そのため「性」がテーマになったときは、この3点を念頭にしてカードを読み解いていくことをしている、というわけです。
タロットにみる「性」の表現
ところで。
実は、タロットの世界観として「性」の表現は非常に大事なことで、タロットの根源的な表現に関わっているものと捉えます。
そのためタロットには、どのカード達にも「性」の表現が付されていて、それは「陽」や「陰」という言葉によって解釈されていきます。
ちなみに
「陽」は、外に自分を打ち出すエネルギーであり、別名「男性性」といわれるもので
「陰」は、「陽」の気を受け取りリアクションするエネルギーであり、別名「女性性」といわれるものです。
ただここで誤解を招きたくないのは、「男性性」や「女性性」といった言葉は、単に「陽」や「陰」という言葉の言い換えに過ぎず、それが生物学的な性差を表しているわけでも、ジェンダー的な性差を表現しているわけでもありません。
男性の生殖器を持っていも「女性性」は備わっているものだし、女性の生殖器を持っていても「男性性」は備わっているもので、人は誰しも「陽=男性性」と「陰=女性性」の両方の性質を持っている、とみます。
また東洋でも「陰陽」の思想は知られていることですが、たとえば、気学では「陽」の気は「天の気」と表現され、その本質は<休むことなく活動し続け分け隔てなく見返りを求めることなくエネルギーを与え続ける質>のことをいいます。
一方で「陰」の気は「地の気」と表現され、その本質は<天の気を余すことなく受け取入れることで万物を生み養い育むことができる質>のことをいいます。
いずれにしても、どちらかに優劣があるわけではなく、ましてや、損得があるわけでもなく、ただ、そういうエネルギーがあるんだよ、というに過ぎません。
そしてタロットは、このような「陽」と「陰」のエネルギーが、どういう場合にどのように作用していくのか、を教えてくれる道具です。
たとえば、この「陽」と「陰」の交わりによって「新しいもの」が誕生し育まれ発展していく、と説くカードもあります。
また「陽」と「陰」が交わってできる「新しいもの」は生き物と限らず、物質的なものであったり、アイデアであったり、さまざまな「もの」を指します。
では。
そんなタロットから、どんな陰陽の表現、つまり、「性」の表現を見ることができるでしょうか?
ここからは、カードをいくつかピックアップして、タロットカードにみる「性」の表現についてお話したいと思います。
全ての始まりを表す「魔術師」にみる性の表現
これは「魔術師」と呼ばれるカードで、数字の「1」が付されています。
タロットは数字の象徴からそのカードの意味を捉えることがあって、この「魔術師」のカードは「1」という数字を代弁するとも考えます。
ちなみに、数字の「1」を象徴図形にすると、このような表現になります。
このシンボルは、自分の内側の世界(目に見えない部分)と自分の外側の世界(目に見える部分)が結ばれる状態を表現します。
そして、内と外の世界がつながることで、あらゆるものが「はじまる」ことを意味します。
また、このようなはじめの一歩を踏もうとする力のことを「陽の気」と表現します。
つまり、数字の「1」が陽の気であることから、「魔術師」は「陽」の性を帯びていることが分かります。
受容の「女教皇」にみる性の表現
次は、「魔術師」のカードの後にくる「2」という数字が付されている「女教皇」です。
「女教皇」は数字の「2」を代弁するカードですが、数字の「2」を象徴図形にするとこのような表現になります。
このシンボルは、「1」で出された「陽」の力を受けて、それと同じだけの力がもうひとつ発せられた状態を表現しています。
これはつまり、この2種類の気を以って「ひとつの世界が二つのものに共有される」と同時に「ひとつの世界が二つに分割される」ということを意味します。
また、このような「陽」の力を受けてリアクションするもうひとつの力のことを「陰の気」と表現します。
つまり、数字の「2」が陰の気であることから、「女教皇」は「陰」の性を帯びていることが分かります。
調和をもたらす「恋人」にみる性の表現
次はいくつか数字を飛ばして、6枚目のカード「恋人」をピックアップしていきます。「恋人」のカードには数字の「6」が付されています。
「恋人」が代弁する数字の「6」の象徴図形は六芒星です。
六芒星とは、上向きの三角形と下向きの三角形が重なり合った姿で、みえるもの(物質世界)と、みえないもの(霊的世界)の調和を表す形です。
なかでも注目したいのは、六芒星の上向き三角形は「陽」の三角形で、下向き三角形は「陰」の三角形だというところ。
つまり、陽と陰が交わることで調和のとれた世界が生まれることを表しているのが、この六芒星の世界観となります。
そして、「陽」だけでは世界の調和がとれなくて、また「陰」だけでも世界の調和が図れない、そういうことを教えてくれる「恋人」のカードでもあります。
堅物な「隠者」にみる性の表現
さて、またいくつか数字を飛ばして、次に9枚目のカード「隠者」をピックアップしていきます。「隠者」のカードには数字の「9」が付されます。
ちなみに、この「隠者」は1枚目の「魔術師」が老成した姿です。
そして、「隠者」が代弁する数字の「9」を象徴図形にするとこのような表現となります。
「9」は3×3で、その象徴図形は上向き三角形が3つピラミッドのように重なった形です。
この図形をよく見ると、中心に下向き三角形ができています。
上向き三角形は「陽」を象徴し、下向き三角形は「陰」を象徴することから、「陽」で囲まれた中心には「陰」が宿ることがこの図から読み解けます。
つまり、「陽」に偏るとその内実には「陰」が生まれる、ということを教えてくれる「隠者」のカードです。
完全なる世界を象徴する「世界」にみる性の表現
さて、タロットの中でも大アルカナ、と呼ばれる分類に属する最後のカードは「世界」のカード。21枚目にあたります。
タロットの「性」を見ていく上では、このカードがタロットの大アルカナの「最後」というところが押さえておきたいポイントで、それはなぜかというと、このカードに描かれている人物が「両性有具」だからです。
両性有具とは、男性器と女性器の両方を備えた存在のことを指します。
またこの両性有具の存在は、陽と陰がもっとも力強い状態でバランスよく統合された人、つまり「完全なる人」として象徴されています。
このカードが大アルカナの「最後」のカードであるということから、タロットでは、「両性有具」が人としての完全体であり最終型であることを表しているといってもいいでしょう。
ちなみに、両性有具の存在が描かれたカードがもうひとつあります。
それが「悪魔」のカード。
愛欲の「悪魔」のカードにみる性の表現
「悪魔」のカードに描かれている中央のデビルが両性有具で、その絵柄をよくよくみると、膨らんだ乳房(女性器)に加え下半身にも膨らみ(男性器)があることがわかります。
そして、このデビルは「あなたの欲しいものはなに?」と問いかける存在。
そんな「悪魔」のカードは、現実を直視できずほんとうに欲しいものが見えなくなっていて、何かに依存することで満たされない状態を埋めようとする状況を示唆します。
特にこのカードは「セクシュアリティ」と「欲」に関わりますが、本質的なテーマは、生存本能からの創造性を発揮することにあります。
ちなみに、ここでいう「セクシュアリティ」とは「陽」と「陰」のことであり、「悪魔」のカードが表す「生存本能」とは生きたいという本能であり、創造性の発揮とは「生き抜く力の発揮」ともいいます。
そしてデビルが問う「欲しいもの=欲」とは、生き抜く力を発揮するための原動力のこと。
だから両性有具のデビルは人を欲望の渦の中に陥れながらも、そこから這い上がる力を人に与えるために問うのだと思います。
ほんまに欲しいものはなに? と
快楽のアメといつまでも満足できない状況のムチの両方を与えながら人を磨く、なかなか厳しい神様でもあります。
タロットが教えてくれる「性」から思うこと
ここまでいくつかのカードをみていきましたが、タロットは、陽や陰、あるいは、そのどちらでもない「性」がそれぞのカードに描かれていて、それらのバランスがどのように働き作用していくのか、を表現します。
肉体的な区別があるとしても、「性」の使い方にルールはないし、決まっているわけもなく、ただ、自分が生きやすいように「性」を使えたらいいね、と案内してくれるのがタロットカード。
こんなカード達と過ごしていると
「こういうもの」と他者から決めつけられることの窮屈さと
「こういうもの」と決められないしんどさに
「こういうもの」と自分で決めることができたときの安心感
そんなものが人の中には混在していて、それが混線することで揺れ動く感情や迷いさえも、タロットが表現してくれることを目の当たりにします。
本来、人が生きるためのエネルギーである「陽」や「陰」の性の力は、生きている以上誰にでも自然に備わっているもの。
けれども人が作る社会の中で生きようとするとき、自分の「性」を、他人の思惑の中でどのように表現し使って生きていくのかに惑ってしまうことがあっても、決しておかしいわけではありません。
また「性」のことを大げさに扱ったり、反対に、どこか曖昧な綺麗事で済ませようとする風潮には違和感を覚えることもあります。
だからこそ。
さまざまな「性」の表現があるタロットを扱う占い師は、人の思惑からいったん離れ、人の酸いも甘いも描くタロットカードからもっとシンプルに「性」を眺めてみませんか? と、セクシュアリティに悩む人へご提案できるのだとも思っています。
そして、もし人の思惑に縛られ現実での生きにくさを感じている人がいるならば、タロットを通して、呪いにも似たその呪縛を解き、自分の存在価値を自分自身で認めるためのお手伝いができるのだとも、私は思っています。
タロットでセッションをするときに大事にしていること
さて。
相談者が今の現状に不都合を感じていて、相談者がそこを相談の焦点にしている場合において、占い師はそれに対して応えることができます。
一方で、占い師が相談者を「言葉」で縛ってしまうことはしたくないのです。
前述の相談者のように、自分で自分の感情がどんなものかが分からないとして、それはもしかすると、一般的な「好き」とか「嫌い」あるいは、「愛している」などのカテゴリーに当てはめようとしているからかもしれない、と思うことがあるからです。
けれども、「好き」も「嫌い」も「愛している」も、その言葉に含まれるものは千差万別です。
たとえば、ある人の「好き」は「あなたとずっと一緒にいたい」という感情がこもっている「好き」かもしれないし、もしかすると、その相手の人が使う「好き」は、「ずっと一緒にいたいとは思わないけれど、好きか嫌いか、といわれれば嫌いではないだけ」の「好き」かもしれないわけです。
必ずしも、同じ言葉が、同じ意味を持っているわけではない。
だからこそ、その言葉の意味を決めるのは、それを使う本人にしかできないのだと思います。
そのため、セッションでもカテゴライズすることは極力控え、「自分の感情が分からない」という相談者に対しては、タロットの展開からそれを解くカギとなるだろうカードをみつけ、そのカードに対する相談者の印象を問います。
なぜならタロットは深層心理を浮かび上がらせてくれる道具ですから、相談者が得たカードの印象が、相談者の感情の根底にある、と捉えるからです。
それに、タロット占いは占い師だけで完結するものではなく、あくまでも「占い師」と「タロットカード」と「相談者」との3者で成り立つもの。
相談者に問わずしてセッションは進められませんし、どんなテーマのご相談であっても、占い師が相談者の敷く境界線へ勝手に踏み込むことは禁物ですし、ましてや、ジェンダー論を説こうとしたり、自分の意見を出したりなどはもってのほか。
タロットからさまざまなことが読み解けるとしても、相談者の知りたいことに応えることが鉄則であり、どこまで掘り下げてお話をするのかはセッションでの相談者との信頼関係によるものであり、占いのセッションとは、「相談者」と「カード」と「占い師」の3者で成り立つものだ、という意識だけは常にもっておくべきことだと、私は、自分自身の戒めにしていることです。
さて、年齢問わず、これからの人生についてのご相談は多く、人には話しづらい恋愛や、病気や大事な人の喪失、あるいは、経営者からの事業展開のご相談に、早期退職や経営から退いた後のキャリアについてのご相談、相続や墓じまいについてのご相談など、さまざまな人生の転機を迎えれらた方が訪ねてくださいます。
そして自分の「性」を問うときも、タロットカードは真摯にあなたと向き合う道具であることだけは間違いないと、私は思っています。
なぜなら、タロットにはさまざまな「性」の表現があり、その「性」を「生きる力」とみなすのがタロットだから。
そして、「陽」と「陰」で表す「性」のエネルギーがどういう場合にどのように働き作用していくのか、を教えてくれる道具だから、です。
自分のことが分からなくなってしまっているときは、いつでもご相談ください。
どんなお話も、お伺いします。
人に言いずらい悩み、誰にも分かってもらえない悩み、お伺いします
悩みを相談できる人がいない、誰にも分ってもらえず相談できない、人に話すと変に思われるのではないかと心配……
周りの誰にも言えないどんなお話もお聞きし、今抱えられているしんどさや辛さ、あなたの気持ちを占いから整理するお手伝いをします。
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